(前回からの続き)
出会い系サイト「スタービーチ」への書き込みから数日経ったある日、ここを利用する女性からメールがあった。
「すぐに会えます。そちらの都合はどうですか?」
礼儀正しい返信に好感が持てた。
待ち合わせは新宿コマ劇前。聞くとアパレルショップの店員をしているという。実際に会ってみると、緩いウェーブがかった黒髪のかわいらしい子だった。
その子に誘われて、ぼくは新橋までついていった。そこでぼくは、マルチ商法まがいのビジネスモデルを4時間延々と聞くはめになる。彼女は副業でネットワークビジネスに手を出していたのだ。
なるほど、だからプロフィールに”友達募集”とあったのか。
変なところで納得した。
「今日はありがとうございました」
帰り際に彼女は、申し訳無さそうな顔で言った。
深々と頭を下げる彼女に不思議と嫌な気持ちにはなれなかった。と、同時にこのまま別れたくない、とも思った。
山手線の車内でぼくと彼女は手を繋いでいた。日はとっくに沈んでいて、外は暗い。
「これから何処へ行く?」
そう聞くと、
「わからない」
と答える。
会話は途切れがちだったが、気にならなかった。ぼくには何か確信のようなものがあったのだ。絶対にこの子を抱ける。そういう確信である。
車内のアナウンスは次が池袋だと告げていた。
出会い系サイトで知り合った見ず知らずの女と池袋のラブホテルへ
池袋西口を出て右に歩いていくと陸橋がある。陸橋を抜けた先にはラブホテル街のネオンが輝いていた。
彼女が一瞬だけカラダをこわばらせて立ち止まったのがわかった。
振り向くと、「いいんです、慣れてるから」と、彼女は言い、また歩き出した。ぼくはとっさに彼女の手を引き、目についたいちばん料金が安いホテルに入る。
いちばん安い部屋を選び、エレベーターに乗り込み、部屋のドアを開けて彼女を入らせ自分もあとに続いた。そうしてドアを閉め、後ろ手でそっとカギをかけた。
その場で後ろから抱き寄せると彼女は体を強く硬直させてあらがった。それでも力まかせに脇から両手をいれて胸にまわし、ブラジャーのうえから乳房を鷲掴みにし、下半身を彼女の腰に押し付けた。
それに飽きたところで彼女をベッドに向かって軽く突き倒した。するとコロンとボールのように転がっていった。
ゆっくり近寄り引きずり起してから、下腹に張りつきそうなほど反りかえっている陰茎を取り出して顔の近くに持っていく。恐ろしく歪んだ顔がのしかかってくるのを見て、声にならないほどの小さな悲鳴をあげた。
スカートはしどろに乱れているし、顔はずいぶんと強ばっている。
「終わったら、少しだけ援助してください」
それだけ言って彼女は仰向けになり、自らパンティを脱いでぼくを受け入れる体勢をとった。
古いホテルだった。
腰が動くたびにギーギーとベッドが軋(きし)む。
硬く勃起はしているが、疲れと眠気でなかなかイクことができない。コンドームは乾き、膣口で擦れる感触が強くなった。
早く終わりにしたかったのか、彼女はゴムを外し、「そのままでいいです」と言う。
「ほんとうに?」と聞くと彼女は小さくコクンと頷いた。
それなら、と彼女のなかに射精することにした。
ぼくは出会い系サイトで自分の女が寝取られたその怒りを、目の前の知り合ったばかりの女にぶつけようとしていたのだ。
射精の瞬間を告げると、彼女はこちらをチラと見てあきらめたように目を閉じた。
「いま中で出している」と言い、彼女の、さまざまな反応を確かめた。中で出されている女の”戸惑いの表情”を見るのは楽しいものだ。
射精し終わったがいまだ硬度をたもっているペニスを膣口からグイと引き抜く。
一瞬の間を置いて股間から薄い乳白色の糊のような液体が流れ出て、その液体は太腿をつたい、シーツを汚した。
丁寧に彼女の股間を拭いてやり、下着を着せて布団をかけた。
ひとりだけシャワーを浴びベッドに戻ると、彼女はパンティの、股間の部分にふたたび流れ出した精液をティッシュで拭(ぬぐ)い取っていた。
なぜだかわからないが、泣いていた。
そのときは泣く理由がわからなかったが、今では少しだけ気持ちがわかるような気がする。
少しだけ仮眠して、彼女はホテルを出て行った。それ以降、連絡はない。家に帰ると、”付き合っていた彼女”から別れのメールが届いていた。
こうしてぼくの出会い系サイトの初体験は終わった。
同じ人生なら、深く濃く生きていきたい
ぼくはいままでもずっと、平凡なサラリーマンだったが、出会い系サイトを利用したことで、ほんの少しだけ人と違った経験をしている。
良くも悪くも、出会いはぼくの人生になんらかの影響を与えてきた。なかには失敗もあるけれど、いまになって思うのは、”出会いってやっぱりいいものだ”ということ。
都会にはこれだけ人が溢れていて、それぞれに人間ドラマがある。それをちょっと覗いてみたくはないか? 体験してみたくはないだろうか?
ドアはいつでも目の前にあって、開けるか開けないかはあなた次第だ。
同じ人生なら、ぼくは深く濃く生きていきたい。
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